ひらがなタイムズ2026年10月号で教える|12記事の授業ガイド

ひらがなタイムズ2026年10月号のテーマは「虫の声」。鈴虫やコオロギの声を「声」として聞いてきた日本人の感性を、表紙・特集・ことばのコラムまで、号全体でたどっています。秋の授業にそのまま使える12記事について、記事ごとにレベル別の活動・導入の一問・キーワード・つまずきやすい点をまとめました。
バックナンバーも、授業の生きた教材として使えます。記事のリンクから全文(一部は購読者向け)を読めます。
01 When the Voices of Insects Become Music | 虫の声が音楽になるとき
- 記事:Cover Story。井上文太氏の表紙「シン・八犬伝 ネネ 秋虫楽団」と、虫の声と日本人の関係
- 初級:表紙を見て「〜がいます」「〜を弾いています」。虫と楽器の名前を結ぶ
- 中級:「虫が発する音を『虫の声』と呼びます」を入口に、「AをBと呼びます」で自国の言い方を紹介
- 上級:中国の鳴く虫の文化、マオリの言葉に残る蝉の話を読み、自国で虫や動物の声がどう受け取られているかを比べる
- 導入の一問:「夜、どんな音が聞こえますか?」(What sounds can you hear at night?)
- キーワード:虫の声/鈴虫/コオロギ/蝉/奏でる/耳を澄ます/季節の移ろい
- 注意点:「音」と「声」のちがい。日本語で虫に「声」を使う感覚を、まず体験させてから説明する
02 Ito Jakuchū — An Eye for Life | 伊藤若冲 ―― いのちを見る眼
- 記事:IBUKI。京都・錦市場の青物問屋に生まれ、鶏や虫のいのちまで描き切った画家・伊藤若冲と、再評価の物語
- 初級:若冲の絵(鶏・野菜・虫)を見せ、「何がいますか?」「何色ですか?」
- 中級:「〜ずつ」「〜ようになる」で若冲の人生を短くたどる(二十三歳で家業を継ぐ→四十歳で絵に専念)
- 上級:「鶏を『見る』のではなく、そのいのちの中へ入り込んでいった」を読み、「見る」と「観る」、自分にとっての「よく見る」とは何かを話し合う
- 導入の一問:「毎日見ているのに、よく見たことがないものはありますか?」
- キーワード:青物問屋/家業を継ぐ/写生/専念する/再評価/いのち/眼
- 注意点:「眼」と「目」の使い分け、「錦市場(にしきいちば)」の読み。京都の台所という呼び方も紹介できる
03 Voices of Insects — An Orchestra from the Universe | 虫の声 ―― 宇宙から届くオーケストラ
- 記事:Japan Style。「星のカケラ」から始まり、「むし」という大和言葉の音、「むす(生す・産す)」「むすぶ」「産霊(むすひ)」へ
- 初級:「むし」「むすぶ」「むすこ・むすめ」など「む」で始まる言葉を集める
- 中級:大きな数字を読む練習(約100万種類、およそ8割、10億匹以上)と「〜に対して」
- 上級:「むし」とは、生命を生み出す力が小さな生命となって姿を現したもの、という見方を読み、ことばの音と意味のつながりについて自由に話す
- 導入の一問:「あなたの体は、何からできていると思いますか?」
- キーワード:星のカケラ/昆虫/大和言葉/むす(生す・産す)/むすぶ(結ぶ)/産霊/蚕
- 注意点:記事の「む」の音の話は、ことばの古い層に耳を澄ます日本語道の見方。辞書の語源とは別の、ロマンのある入口として楽しませる
04 Japan’s Summer Staple “Muhi” Turns 100! | 日本の夏の定番「ムヒ」が100歳に!
- 記事:News Review。虫刺され薬「ムヒ」の発売100周年と、富山の「置き薬」
- 初級:「虫に刺されました」「かゆいです」を、身ぶりと一緒に。ドラッグストアでの一言に
- 中級:「置き薬とは、〜仕組みです」の型で、身近なサービスの仕組みを説明する
- 上級:「使われた分だけ代金を受け取る」置き薬と、今のサブスクや後払いを比べて話し合う
- 導入の一問:「蚊に刺されたら、どうしますか?」
- キーワード:虫刺され/定番/清涼感/発売100周年/置き薬/薬売り/無比
- 注意点:「刺す」と「刺される」(受け身)、「スーッとした」のオノマトペ。「無比」の意味は「比べるものがない」
05 Frenemy | フレネミー
- 記事:New Expressions & Buzzwords。フレンド(友達)+エネミー(敵)
- 初級:「友達」「敵」を絵カードで。カタカナ語の組み合わせを当てるクイズ
- 中級:「表面上は〜ながら、陰では〜」の型で、人物を説明する文を作る
- 上級:英語圏で生まれた言葉が日本でも使われるようになった例を集め、和製英語との違いを話し合う
- 導入の一問:「仲がいいのに、ライバルでもある人はいますか?」
- キーワード:組み合わせる/振る舞う/陰で/悪口/足を引っ張る/競争心
- 注意点:「足を引っ張る」は比喩。人を傷つける話題になりやすいので、具体的な人の名前は出さずに話す
06 Dopamine brat | ドパガキ
- 記事:New Expressions & Buzzwords。「ドーパミン中毒のガキ」を略したネットスラング
- 初級:「ショート動画を見ます」「すぐに飽きます」。一日のスマホ時間を言う
- 中級:略語の作り方(ドーパミン+ガキ→ドパガキ、アドレナリン→アドガキ)。11月号「メンブレ」の4拍の略語とつなげられる
- 上級:「揶揄や自虐を込めて」使う言葉の距離感を話し合い、自分を表す新語を作る
- 導入の一問:「一日に、ショート動画を何分見ますか?」
- キーワード:略す/刺激/分泌する/集中力が続かない/飽きる/揶揄/自虐
- 注意点:「ガキ」は乱暴な言い方。人に向けて使わず、自分を笑うときの言葉として紹介する
07 Cicadas Robbed of the Night | 夜を奪われた蝉たち
- 記事:Close Up Japan。夜も明るい街なかで、深夜まで鳴き続ける蝉
- 初級:「昼/夜」「明るい/暗い」「鳴きます/鳴き止みます」を絵で
- 中級:「〜では〜が、〜では〜」の対比の文(緑地では鳴き止み、街なかでは鳴き続ける)を、自分の町で作る
- 上級:鳴き終えた蝉が「手足」を揃える姿を「祈り」に重ねる結びを読み、事実と書き手の思いの書き分けを話し合う
- 導入の一問:「あなたの町の夜は、明るいですか?」
- キーワード:観測する/鳴き止む/鳴き続ける/街灯/蓄熱/眠らない街/全うする
- 注意点:「〜続ける」と「〜止む」。「鳴く」(動物)と「泣く」(人)の漢字
08 Can Humanity Save the Earth? | 人類が地球を救う?
- 記事:Pros & Cons。「地球を守る責任がある」と「行き過ぎた押し付けは経済を萎縮させる」
- 初級:「賛成です」「反対です」の札を上げ、「〜からです」で理由を一つ
- 中級:宇宙約138億歳・地球約46億歳など、大きな数字と「〜にすぎない」
- 上級:「地球からすれば『大きなお世話だ。自分たちを救え。』であろう」を読み、「地球を救う」という言い方そのものについて議論する
- 導入の一問:「地球のために、毎日していることはありますか?」
- キーワード:気候変動/環境対策/責任/押し付け/萎縮させる/思い上がり/整える
- 注意点:書きことばの「である」「だろう」。先生は意見を出さず、学習者の考えを引き出す役に
09 The Worms Within Came from the Universe | 腹の虫は、宇宙から来た
- 記事:言波。腹の虫、虫の知らせ、虫が好かない、虫がいい。日本語に顔を出す「虫」の正体を、腸と脳のつながりから考える
- 初級:「おなかがすいた」「おなかが鳴った」を入口に、「腹の虫が鳴く」を紹介
- 中級:英語の「お腹の中に蝶がいる」、中国語の「あなたは私の腹の中の虫なのか」と比べ、自国の言い方を紹介する
- 上級:「脳腸相関」の話を読み、「腹が立つ」「腹を決める」など、気持ちを腹に置く日本語を集めて話し合う
- 導入の一問:「緊張すると、体のどこが変になりますか?」
- キーワード:腹の虫/虫の知らせ/虫が好かない/虫がいい/腸内細菌/脳腸相関
- 注意点:「腹」は「おなか」よりくだけた・古い響き。決まった言い方の中で覚えさせる
10 Words That Live with Insects | 虫と暮らす言の葉
- 記事:言の葉。「虫」にまつわる言葉から、日本人が虫とどう暮らしてきたかをたどる
- 初級:虫の名前と絵を結ぶカードゲーム(蝉・鈴虫・コオロギ・蝶・蛍など)
- 中級:「虫」が入る言葉を集めて、「生き物」「気持ち」「人のこと」に分類する
- 上級:「ことば」に「葉」を当てた背景にある自然崇拝、『万葉集』の名前から、言葉と自然の関係を話す
- 導入の一問:「あなたの国のことばで、虫が入った言い方を知っていますか?」
- キーワード:言の葉/木の葉/色づく/自然崇拝/万葉集/〜にまつわる
- 注意点:「言の葉」と「言葉」。詩的な言い方として紹介し、日常語との使い分けに触れる
11 Bugs Live in the Belly | 腹に虫が住む
- 記事:言技「腹の虫が治まらない」。怒りも不機嫌も好き嫌いも、腹の中の「虫」のせいにしてきた日本人
- 初級:「怒っています」「機嫌が悪いです」を表情カードで。ケンタとミサキの会話を役読み
- 中級:虫の居所が悪い/虫が好かない/虫がいい/虫の知らせを、場面カードで選ぶ
- 上級:庚申の夜に天に昇って告げ口する「三尸の虫」の言い伝えを語り直し、「責任は虫に預ける」日本人の感覚について話し合う
- 導入の一問:「怒りがなかなかおさまらないとき、どうしますか?」
- キーワード:腹の虫/治まらない/虫の居所が悪い/虫が好かない/虫がいい/虫の知らせ/庚申
- 注意点:「虫がいい」はほめ言葉ではない(自分に都合がいい)。「治まる」と「収まる」
12 Voices of Insects — The Soundtrack of Autumn in Japan | 虫の声 ― 日本の秋のBGM
- 記事:Japan Savvy。秋の夜の虫のコーラスと、自然の音を「言葉」にするオノマトペ
- 初級:虫の声を聞いて、「リーンリーン」「コロコロ」のように声に出してまねる
- 中級:風・雨・波の音のオノマトペを集め、「〜という音がします」で文を作る
- 上級:「日本語のオノマトペは4500ほど」の話から、自国語の擬音語と比べ、言葉と自然の近さを話し合う
- 導入の一問:「あなたの国では、虫の声をどう書きますか?」
- キーワード:響く/言語化する/不思議/生み出す/古い感覚/オノマトペ
- 注意点:オノマトペは聞こえ方の文化。正解を決めず、学習者の国の聞こえ方を面白がる


