ひらがなタイムズで教える|「好き」を語らせる人物記事

「それ、自分で作ったの?」。友だちの手作りの品を見て、思わず口にする言葉です。ひらがなタイムズ11月号の「民のいぶき」は、この一言から始まります。
登場するのは、バーコードのために会社を作った人、16枚のカードで世界のテーブルに届いた人、会社員の趣味からドイツ年間ゲーム大賞までたどり着いた人。人の物語は、学習者の口を開かせる一番の教材です。「好きなこと」を話すとき、学習者の日本語は急に生き生きし始めます。
記事の音声:ひらがなタイムズの朗読音声です。授業の聞き取りやシャドーイングにも使えます。
この記事で教えられること
- 文法:「〜ずにいられない」(作らずにいられない/せずにいられない)
- 語彙:手作り/推し/キャラ弁/夢中/作り手/同人誌/思い違い
- 表現:「誰に頼まれたわけでもないのに」「思わず口にする」
- 文化:ゲームマーケットやコミックマーケットのように、作った本人が机の向こうに座る場
- 話す力:自分の「好き」と、その理由を語る
導入の発問
- 「最近、自分で何か作りましたか?」
Have you made anything yourself recently? - 「あなたの『推し』は誰ですか?」
Who is your oshi — the person or character you love most? - 「つい、やってしまうことは何ですか?」
What is something you just can’t help doing?
三つ目の問いは、そのまま「〜ずにいられない」の導入になります。英語で答えが返ってきたら、それを日本語に置き換えるところから始めてください。
レベル別の使い方
初級
「手作り」「推し」「キャラ弁」など、写真で見せられることばから入ります。「これは手作りのうちわです」「推しは〇〇です」のように、名詞を一つ入れかえるだけの文で十分です。好きなものを一つ持ってきてもらい、「これは〜です。好きです」と紹介する「ショー・アンド・テル」も盛り上がります。
中級
「〜ずにいられない」を練習します。「ない」の形から「ない」を取る、「する」は「せず」になる、の二点だけ押さえ、「〇〇を見ると、〜ずにいられない」の型で自分の文を作ってもらいます。そのあと、記事の三人の作り手から一人を選び、「この人は〜ずにいられない人です」と紹介する活動につなげられます。
上級
記事の中の「ちょっとした思い違いから、世界にゲームを届ける会社が生まれたのです。」や、小さな箱の大きさを変えなかったオインクゲームズの話を読み、「続けること」「変えないこと」について意見を交わします。さらに「遊ぶことに夢中な人は、どこの国にもいます。でも、自分で作るところまで夢中になる人がこれほど多いのは、日本ならではだと思います」という一文を取り上げ、自分の国と比べて話してもらうと、深い対話になります。
日本語道の視点
記事の題は「作らずにいられない人々」。「作りたい」でも「作ってしまう」でもなく、「ずにいられない」です。誰に頼まれたわけでもないのに、手が動いてしまう。その気持ちを一生の仕事にまで高めた人たちが、世界中で遊ばれるゲームを生み出しました。1953年、宮城の高校生だった石ノ森章太郎は、仲間と描いた原稿を綴じた一冊を郵便で全国に回していました。その手作りの一冊を手塚治虫が読み、翌年、仕事を手伝ってほしいという電報が届きます。「好き」は、手から手へ回って人をつなぎます。ことばを教えることも、学習者の「好き」を受け取り、次へ回していく営みです。
つまずきやすいところ
- 「〜ずにいられない」と「〜たい」:「作りたい」は希望、「作らずにいられない」は止められない気持ちです。「やめようと思っても、やめられない」と言いかえて見せると、ちがいが伝わります。
- 「する」の形:「しずにいられない」と言う学習者が多くいます。「する→せず」だけは別に覚えるよう、板書で目立たせてください。
- 「推し」の使い方:「推し」は名詞として使います。「推しのうちわ」「推しは誰?」のように、まず名詞の形で慣れてもらうと安心です。
授業で使える英語のひとこと
- “Zuni irarenai means you can’t stop yourself, even if you try.”(止めようとしても止められない気持ちです)
- “Suru is special: sezu ni irarenai.”(「する」だけは「せずにいられない」)
- “Tell me about something you love. Your Japanese will come alive.”(好きなことを話すと、日本語が生き生きします)
記事全文はこちら:作らずにいられない人々(ひらがなタイムズ)

