ひらがなタイムズで教える|ハロウィンと百鬼夜行

「こわい!」。学習者が最初に覚える形容詞の一つです。ところが、この一語の奥には、日本人が怖さとどう付き合ってきたかが詰まっています。
ひらがなタイムズ11月号の表紙は、画狂人・井上文太氏が描いた「百鬼夜行とハロウィンの出会い」。妖怪とかぼちゃ頭と魔女が、同じ夜に踊っています。この一枚があれば、ことばの授業も文化の授業も一度にできます。
記事の音声:ひらがなタイムズの朗読音声です。授業の聞き取りやシャドーイングにも使えます。
この記事で教えられること
- 語彙:怖い/怖さ/恐怖/震え上がる/お化け/妖怪/提灯
- 文法:い形容詞の名詞化(怖い→怖さ)、「AをBに変える」
- 表現:「本来なら〜ですが」(本当ならそうなるはずのことと、実際のちがい)
- 文化:百鬼夜行とハロウィンの比較、「恐怖を笑いに変える」日本の遊び
- 鑑賞:絵を見て、そこにいるものを日本語で言う練習
導入の発問
- 「この絵の中に、何がいますか?」
What can you see in this picture? - 「あなたの国のハロウィンは、どんなお祭りですか?」
What is Halloween like in your country? - 「この絵は、怖いですか?楽しいですか?」
Is this picture scary, or fun?
最後の問いが、この授業の芯になります。答えは一つではありません。「怖いけど、楽しい」と言えたら、それがこの記事の入口です。
レベル別の使い方
初級
表紙を見せて、見えるものを指さしながら言ってもらいます。「ねこ」「かぼちゃ」「ちょうちん」「おばけ」。次に「〜がいます」「〜があります」の文にします。「くろいねこがいます」「ちょうちんがあります」。最後に「こわい」「たのしい」「かわいい」の三つから一つ選んで、「このおばけはかわいいです」と言えたら十分です。
中級
「怖い→怖さ」「楽しい→楽しさ」「かわいい→かわいさ」と、さの名詞化を練習します。そのうえで、記事の一文「恐怖を笑いに変え、異国の祭りまで仲間に入れてしまう。」を読み、「AをBに変える」で自分の文を作ってもらいます。「雨の日を読書の日に変える」など、身近な例が出てくると盛り上がります。
上級
記事の後半「妖怪は、人間の鏡でもあります。笑いは、怖さを知る者にしか作れません。」を読み、意見を話してもらいます。玉梓の着物の骸骨の模様に込められた「節度を失った人間こそ恐ろしい」という井上氏の眼差しを紹介し、「本当に怖いものは何か」を自分の国の昔話やお祭りと比べて話す活動ができます。
日本語道の視点
記事は、恐怖を笑いに変え、異国の祭りまで仲間に入れてしまう柔らかさを「日本の遊びの強さ」と言います。怖いものを追い払うのではなく、輪の中に入れて一緒に踊る。表紙の夜には、桃色、水色、黄色が溶け合っています。怖さと楽しさが溶け合う感覚は、ことばにも表れています。「お化け」に「お」がつくのも、どこか親しみがあります。学習者に「なぜ怖いものに『お』がつくのでしょう?」と投げかけ、答えを一緒に調べてみてください。学習者と一緒に日本を探る、日本語道の時間が自然に生まれます。
つまずきやすいところ
- 「怖い」と「怖がる」:「犬が怖い」は言えても、他人の気持ちは「弟は犬を怖がっています」と言います。「怖い」は自分の気持ち、「怖がる」は外から見た様子、と短く伝えると整理できます。
- 「お化け」と「妖怪」:英語ではどちらもghostやmonsterになりがちです。「お化け」は日常のことば、「妖怪」は河童や天狗のように名前と姿を持つもの、と例を見せると分かりやすくなります。
- 「恐怖」の硬さ:会話で「恐怖です」と言うと大げさに聞こえます。会話では「怖い」、文章では「恐怖」と使い分けを示してください。
授業で使える英語のひとこと
- “Kowai is how you feel. Kowagaru is how someone else looks.”(「怖い」は自分の気持ち、「怖がる」は他の人の様子)
- “Add sa to make it a noun: kowai, kowasa.”(「さ」をつけると名詞になります)
- “In this picture, scary and fun live together.”(この絵では、怖いと楽しいが一緒にいます)
記事全文はこちら:怖さも遊びに変える国(ひらがなタイムズ)

